相続土地国庫帰属制度は簡潔に言うと「相続した利用しない土地を手放す制度」です。
相続をしたけれど、その土地を手放したいという人が増えています。取得を望まない所有者の負担感が増し、管理不全を招いています。所有者不明土地の発生を抑えるため、相続や遺贈により土地の所有権を取得した人が土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度が創設されました。
土地の国庫帰属を申請できるのは相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により、土地の所有権を取得した相続人です。
土地が他の相続人との共有である場合は、相続・遺贈によって持分を取得した相続人を含む共有者全員で申請する必要があります。
この制度の対象は 土地 です。建物は対象外です。
以下のような土地は申請できません。
・土地上に建物が存する土地
・担保権や使用及び収益を目的とする権利(地上権など)が設定されている土地
・通路その他、他人による使用及び収益が予定されている土地として、次の①~④が含まれる土地
①現に通路の用に供されている土地
②墓地内の土地
③境内地
④現に水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地
・土壌汚染対策法に規定される特定有害物質により汚染された土地
・所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
また、審査段階で以下に該当すると判断されると不承認となります。
・崖がある土地で管理又は処分に過分な費用や労力を要する土地
・土地上に工作物、車両又は樹木その他の有体物が存し、その有体物が土地の管理又は処分を阻害する土地
・除去しなければ、通常の管理又は処分をできない有体物が地下に存する土地
・隣接する土地の所有者との争訟によらなければ管理又は処分をできない土地
・通常の管理又は著聞をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
(熊やスズメバチが出る、整備が必要・・・など)
法務局本局の国庫帰属申請窓口に申請を出す場合は、承認申請者本人 又は 法定代理人(未成年後見人・成年後見人など)が来庁(使者による提出可)し、又は郵送により行います。
郵送申請の場合は、国庫帰属の申請書が入っていることを記した書留郵便(封筒と切手を自分で用意)か、レターパックプラスに申請書と添付書類等を入れて、土地の所在する法務局の本局まで送付します。
※郵送に先立って、可能な限り法務局で事前確認をしてもらうようにしましょう。
審査期間:申請から帰属の決定(却下、不承認の判断を含む)までに8ヶ月程度を要します。
☆手続代理が認められるのは、法定代理人(未成年後見人、成年後見人等)に限られます。任意代理による申請は認められません。
☆申請書及び添付書類はご自身で事前に作成する必要があります。
☆弁護士、司法書士、行政書士は、承認申請者本人に代わって申請書の書類作成を代行するkとができます。この場合、申請書に作成者を記載する必要があります。
☆申請書を作成するに当たり、所有者の家族や親族が書類作成を手伝うことができます。(承認申請者の氏名は土地所有者本人である必要があります)
☆申請書類の提出は、承認申請者本人ではなく使者(家族など)が法務局本局に来庁してすることも可能です。使者の場合、申請書の訂正等はできません。
要件審査を経て承認を受けたら、政令によって定められた負担金を支払う必要があります。
負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費相当額です。
10年分の管理費相当額の納付が必要になるのは、帰属承認を受けたときの一度のみです。
申請があった土地は「宅地」「農用地」「森林」「その他」の4種類に区分され、この区分に応じて納付が必要な負担金が決定します。
●宅地
<<原則>>20万円
<<例外>>
都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている土地は、面積区分に応じた算定額となります。
●農用地
<<原則>>20万円
<<例外>>
主に農用地として利用されている土地のうち、次のア~ウの農地は、面積区分に応じた算定額になります。
ア 都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の農地
イ 農業振興市域の整備に関する法律の農用地区域内の農地
ウ 土地改良事業等の施行区域内の農地
●森林
面積区分に応じた算定額となります。
●その他
20万円(面積にかかわらない)
※負担金が納付された時点で、土地の所有権は国に移転します。
条件に合った土地なら負担金を支払って手放す(国庫に帰属させる)ことができます。
ただし、細かなルールはたくさんありますので、よく調べて申請書や添付書類を用意する必要があります。面倒なことは全て任せたい、手続きに不安がある・・・といった方は、行政書士や司法書士へ相談しましょう。
当事務所でもご相談を受け付けております。気軽にご連絡ください。