大切な家族として、ペットと暮らしている人も多いでしょう。
ペットより先に自分が亡くなったらどうしよう・・・そう不安になり、可愛いペットを守るため、そのペットに遺産を相続させたいという方もいるかもしれません。
しかし、残念なことに日本の法律上、動物は「物」として扱われます。
生前に何かしらの対策をしなければ、ペットは遺産分割協議で定められた人に引き取られることになります。ペットのためには、大切に世話をしてくれる方(第三者)に引き取ってもらい、その方にペットの世話に必要な財産を引き継ぐのが良いでしょう。
ペットの世話を条件に財産を引き継ぐ方法は3つ。
・負担付遺贈
・負担付死因贈与
・ペット信託
今回は負担付遺贈、負担付死因贈与について触れます。
(次回、ペット信託について書かせていただきます。)
負担付遺贈とは・・・
遺言によって、受遺者(遺贈を受ける人)に一定の義務(負担)を課した上で財産を譲ること。
・法律上の性質:単独行為(遺言による一方的な意思表示)
・効力発生時期:遺言者の死亡時
・負担の範囲:財産の価値を超えない範囲で義務を負う
・負担の強制力:履行しない場合、相続人が解除請求可能。
・受遺者の合意:不要
・具体例:「自宅をAに遺贈する。ただし、母の生活費を負担すること」
「財産を遺贈するので、代わりにペットの世話をしてください」と遺言書を作成します。
相続人よりペットの世話を任せるのに適した信頼できる人(第三者)にお願いする方法です。
「ペットの世話をしたくないから財産はいらない」と拒否されてしまうことも考えられますので、遺言書作成前に合意を得ておきましょう。
遺言書は公正証書遺言で作成することをお勧めします。
負担付死因贈与とは・・・
贈与者が死亡したときに効力が発生する贈与契約で、受贈者(贈与を受ける人)に一定の義務を課すもの。
・法律上の性質:契約行為(贈与者と受贈者の合意が必要)
・効力発生時期:贈与者の死亡時
・負担の範囲:契約内容によるが、遺贈と異なり契約で自由に決められる。
・負担の強制力:履行しない場合、契約違反として解除可能。
・受贈者の合意:必要
・具体例:「私が死亡したら土地をBに贈与する。ただし私の墓の管理を行うこと」
ペットの世話をすることを条件として、財産を死因贈与する契約です。
前述の負担付遺言は遺言者の一方的な意思表示ですが、負担付死因贈与は双方合意の契約ですので、受遺者はペットの世話を放棄することができません。そのため条件付遺言より確実な方法と言えるでしょう。
他の相続人よのトラブルを防ぎ、契約を立証するためも、必ず契約書を作っておきましょう。
遺言執行者/死因贈与執行者を指定しておくことは、とても大切です。
指定された執行者に ペットの世話をきちんとしているか監督してもらいます。
どちらを選ぶかは、相手の同意の有無や、義務履行の強制力をどこまで求めるかによります。
負担付遺言の場合、民法で定められた方式(自筆証書遺言,公正証書遺言)に従って遺言書を作成することが大切です。負担付死因贈与の場合、双方合意を証するための契約書を作成することが必要です。
どちらも、当事務所で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。